1343人が本棚に入れています
本棚に追加
華恋はその場からしばらく動かないが、授業は進んでいく。
光輝や俊は少しばかり華恋の事を心配しているようだが、大樹はまったくの無関心であった。
「じゃあ模擬戦始めるから適当にみんなペアになれ。でなきゃ始まらねー。」
恭介の言葉でそれぞれがペアを組み出し、順番に闘技場のフィールドに上がっていく。
「じゃあ俊、僕とやろうか?」
光輝は大樹とではなく、俊と組もうと問いかけた。
理由は簡単。
勝てないから。
「いいのか、大樹と組まなくて?」
「いいよ、どうせ勝てないし…。」
今の大樹はそっとしておいた方がいいと、光輝は思った。
誰が見てもただの無表情で何も考えてないように見えるが、実際はイライラしているのが光輝には分かる。
長年一緒にいた賜物である。
ただの怒りか後悔か。
そこは分からない。
しばらくしてようやくフィールドが空いたのか、光輝と俊はフィールドに上がった。
「さて、光輝は光と闇の両方を持ってるやばい奴だからな。用心していかないと。」
「俊の実力、見せてもらおうかな…。」
光輝は右手に漆黒の魔力を集め、それは拳サイズの球体へと凝縮した。
「じゃあ、始めろ。」
恭介の言葉と同時に、俊が身体強化の魔法を纏って光輝に突っ込む。
この程度か、と光輝は思いながらも学生なら仕方ない、と向かってくる拳を躱そうとした。
が、俊の拳は光輝の頬を捉えた。
いきなり拳が加速したわけでも、体が動かなかったやけではない。
ただ、目線がもう光輝に向いていなかっただけ。
その目線は、何故か大樹へと向けられていた。
最初のコメントを投稿しよう!