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大樹と華恋はフィールドに上がり、対峙した。
誰もが緊張して見守るような一戦をフィールドの外から真剣に見る光輝。
まかさこのカードで模擬戦が行われるなど、数分前の光輝には分からなかった。
ただ大樹が華恋を殺すようなら、止める。
まだ殺さないと、大樹には言われているのだから。
「さて、焔のお嬢様。戦う事にはなったが、ただ戦うだけでは得が無い。
あなたが俺に勝てたなら、焔のゴミについて教えてあげましょう。」
無表情な大樹の顔からは何を考えているのかは分からない。
華恋は大樹の言葉を聞き、本気で戦おうと決めた。
自分が好きだった兄の事を知る必要も、その権利も、自分にはあるはずなのだから。
「いいでしょう。絶対に負けません。」
大樹はフッと笑うと右手に燃え盛る炎の剣を創り出し、華恋に向けた。
「華恋さんはこの学園でもかなりの実力者らしいから気を付けてね?」
光輝はそう大樹に伝えたが、すでに大樹の耳には入ってはいない。
「じゃあ……始めるか。」
刹那、大樹は氷のように冷たい目を華恋に向け、突っ込んだ。
華恋は魔力を右手に集め、真っ直ぐ突っ込んでくる大樹に向けた。
「フレイムボム」
直径一メートルぐらいの炎球が大樹に向かって放たれる。
大樹にそれは直撃し、爆発を起こした。
だが、爆発自体が弾け、そこに佇むのは大樹。
傷一つ付いてはいない。
「なんだ、焔の力ってその程度なんだな。」
ガラスのように冷たい瞳は、尚も冷たく華恋を覗いた。
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