1343人が本棚に入れています
本棚に追加
華恋は目を見開く程に驚き、目の前の光景にただずんだ。
どう見ても直撃。
防ぐ素振りも見えなかった。
なら、何故傷一つ付いていないのか。
幾多の可能性が頭を巡るが、答えは分からない。
「期待外れだな…。まぁ、学生ならこんなものか。」
大樹は右手の炎剣を一薙ぎすると、ため息を一つ。
「本気でやんねーと、すぐに負けちまうぞ?」
「くっ!!フレイムボム!!」
大樹の言葉に怒りを感じたのか、華恋はフレイムボムを大樹に連続して放つ。
だが、一つとして当たる気配も無い。
「もっとよく狙え。これじゃいつまでも当たらないぞ?」
ヒョイヒョイ避ける大樹は、もはや華恋に興味を失ったように感情の籠らない目を向ける。
「それで勝つ気なのか?」
気づけば大樹は華恋の目の前にいて、炎剣を一薙ぎ。
華恋はフィールドの端まで吹っ飛び、転がった。
「この学園では上位の強さを誇るから勝てるなんて思ってるんじゃねーだろーな?
これだから貴族様は困るよ。」
哀れみすら込められた瞳が華恋を覗く。
起き上がろうにも、華恋の体は言う事を聞いてはくれない。
「この剣は斬れはしないから安心しろ。まぁ、炎ではあるがな。」
「くっ!!」
ようやく立ち上がった華恋は肩で息をしていて、満身創痍にしか見えない。
炎剣で打ち抜かれた腹部も服が焦げている。
「お兄ちゃんの為なら、私は負けられない!!」
華恋の魔力が高まり始め、華恋の頭上に炎が集まる。
だが、呆然とした様子で大樹はそれを見ていた。
「あれは…最上級かな。」
静かに握った拳に力を込めて。
最初のコメントを投稿しよう!