落ちこぼれの烙印

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大樹は内心緊張しながらも水晶に右手で触れた。 だが、水晶は何の反応も見せず、メーターは微動だにしない。 「…………は?」 霧弥は唖然とした様子で水晶を眺め、目の前の事実を信じれずにいた。 「大樹……もう一度頼む。」 大樹はビクビクしながらももう一度水晶に触れた。 だが、水晶に反応は無い。 霧弥の表情は絶望、というより焦りに染まった。 「…………クッ。これが父上に知れれば」 「もう知っておるよ。」 部屋の壁にもたれ掛かる厳造の存在にその時初めて気づき、霧弥の頬を冷や汗が伝った。 「父上!!大樹は」 「使用人!!今すぐこのゴミを牢にぶちこめっ!!」 厳造が荒れた叫びを上げると、大樹は謝る使用人のメイドたちに担がれ連れていかれた。 放心していた霧弥だったが、すぐに意識を取り戻して厳造に掴み掛かった。 「なんじゃ?焔の恥を牢に入れて何が悪い?あやつの事は忘れろ。咲や華恋という素晴らしい才能を持った子がいるではないか。」 厳造はそう言うと、その場を去った。 「クッ!!」 悔しがる霧弥は唇を噛み切り、口元には一筋の血が流れていた。
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