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『鬼道』
『どうした?』
『さっきの戦略の事なんだが…』
『ああ』
苛々。
俺の目の前で二人が仲よさ気に会話している。
サッカーの話をしているだけだと分かっていても、時折笑いあったり、視線を絡ませたりするのが気に入らない。
こんなことで自分が嫉妬深い人間だと判明、ああ、嫌になる。
ドリンクを飲みながら視線を芝生に落とした時、初めて貧乏揺すりをしていた事に気付いた。
『…ちっ』
がり、とボトルを噛む。
『不動?』
影が落ちる。
目の前に立ってる人間を鋭く睨み上げた。
『…何を怒ってるんだ?』
『べーつにぃー』
『嘘つけ』
そいつがその場に屈み、俺はそいつを見下ろす形になる。
伸びてきた手が優しく額に触れた。
『眉間に皺寄ってる。可愛い顔が台なしだ』
ふ、と微笑まれ、頬がかぁっと熱くなるのを感じた。
源田の手は大きくて温かくて、慈しむようで。
酷く心地良い。
『…なんでもねぇって』
額の手が下に滑り降り、頬を包む。
『そうか。なら、いい』
愛しげに笑うその顔が大好きで、きゅうんと胸が締め付けられ、少し痛い。
ああ、もう。
俺はこいつが好きで仕方ないようだ。
その笑顔を独り占めしたくて、目の前の恋人を抱きしめた。
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