鬼道×不動

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自殺[じさつ] 自ら命を断ち、世界から逃げること。 また、愚かな行為。 街灯やビルの明かりが俺を照らす。 町並みはいつも通り。 俺を見下げる街たちは今、俺を見上げている。 頬を撫でる風は厭に冷たくて、何故か可笑しくて仕方なかった。 かしゃん、 手をかけるとフェンスが軋む。 この向こう側に行けば、行けることが出来たら俺の世界は一回転。 真逆の世界が迎えてくれる。 かしゃん、 足をかけるとフェンスがへこむ。 見ていた時より、昇ろうとしている今のほうがずっと高くて少し、焦れた。 『ふ、ぅ…』 漸くたどり着いた頂点。 そこに腰掛け、空を仰ぐ。 高い空はずっと遠くて、懸命に手を伸ばしても届く訳無く、無様に宙を切った。 そろそろ、彼が来てくれるはずだ。 俺が残した置き手紙を読んだらきっと、血相を変えてきてくれる。 フェンスの向こう側に立つ俺に何と言うだろうか? (『馬鹿な真似はやめろ』?) (『それがお前の選んだ道なら構わない』?) 『一人でいくのは寂しくないか?』 かしゃん、 フェンスが軋んだ。
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