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閉じた瞼の上に口づけを落とされる。
絡めた指から甘い痺れが全身に回って、なんだか頭がぼんやりしていた。
『可愛い顔』
くつくつ笑う声に少しむっとして何か言ってやろうと口を開いたが、間髪入れず頬にキスされてタイミングを失った。
ちゅっというリップ音が耳元で何度も響く。
恥ずかしさが頂点に達し、思わず彼の胸に飛び込んで顔を埋めた。
優しい手つきで頭を撫でられる。
普段の彼からは想像出来ないくらい、穏やかな手つきで、だ。
『だいすき』
ちらりと盗み見た顔は酷く愛おしそうな瞳をしていて、俺の胸がきゅう、と締め付けられてしまう。
ああ、俺も大好き。
好きすぎて好きすぎて困るくらい。
耳が赤いと笑いながら指摘する声に五月蝿い、とだけ返事をした。
彼の服を握る手に力を込めて、ぐいぐい顔を押し付ける。
『顔見せてよ、鬼道クン』
今の顔を見られるのは絶対に嫌だ。
耳まで熱くて、間違いなく俺は真っ赤になっているから。
『…キス出来ないだろ?』
甘く呟かれたその言葉。
こいつは俺の心臓を壊すつもりなのだろうか。
さっきからどきどきしっぱなしで、息まで苦しくなってしまう。
ゆっくり顔を上げると蕩けた表情の彼がこちらを見ていた。
唇が言葉を紡いで、少し驚いた俺を尻目に、笑いながらそれを重ね合わせた。
( 『なんでこんなに愛おしいんだろうな』 )
それは、こちらが聞きたい。
唇から伝わる愛しさと切なさに、耐え切れなくなって瞼を降ろした。
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