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纏わり付く不快な視線。
振り向けば、その気持ち悪い視線を送る男と目が合ってしまうだろう。
ひたすら無視。
俺にはそれしか出来ない。
『きどうさん』
ひたすら無視。
振り向いてはいけない。
『きどうさん』
ひたすら無視。
すぐ後ろから荒い呼吸が聞こえる。
『きどうさん』
そっと肩に置かれた、手。
振り払いたい衝動に駆られるが、俺が拒絶してもこいつを喜ばせるだけだ。
( 『やっと気付いてくれましたね!』なんて言われるに違いない )
ひたすら無視。
気持ち悪い。
怖い。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
疎ましい。
気持ち悪い。
『きどうさん、』
首筋を掠めたその指、背中に嫌な汗をかく。
泣いて逃げ出したい。
彼が恐ろしくて仕方ない。
いつからだ、こいつがおかしくなったのは。
昔は普通で、可愛くて、俺を慕ってくれていた。
なのに今じゃあこの様だ。
こんな愛情、俺は欲しくない。
『きどうさん…』
ぴたりとくっつけられた体。
後ろから汚いモノを押し付けられている。
本当に泣きそうになってきた。
『あいしてますよ』
項にがぷりと歯を立てられた。
思わず『ひ、』と短い悲鳴を上げてしまう。
『嗚呼、』
ああ、しまった…!
『やっと気付いてくれましたね!』
誰か、助けてくれ。
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