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「え?それかけてても矯正されてない、の?」
「若干、矯正はされているらしいのですが、それはもう気分的に、と言っていいぐらいですよ。こんなに分厚い眼鏡をかけても矯正されるのはその程度。それほどまでに僕の目、この場合脳と言ってもいいかもしれませんが、おかしいということでしょうかね。それにこの時代はずれの眼鏡はほかの意味合いも兼ねているのですよ。」
「眼鏡って、他に使い道あるの?」
「はぁ…出ましたよ。先生の発想力のなさ。先生の脳は使い物になるんですから、しっかり使ったらどうですか?」
その自虐ネタは笑えない。
「…目を隠すため?とか?」
「そうですよ。しっかり物が見えないとどうしても視線が定まらないですからね。どうしても周りの人の視線が集まりやすい。だからこれでカモフラージュしているわけです。」
馬鹿にされまくりの私が正解したのだから、もう少し褒めてもバチは当たらないのではないか。
そんな会話をするためだけに私は辺銀の歩みを止めていたことに気付いた。
よく見れば彼の額には汗が滲んでいる。
そこで私は唐突に思った。
辺銀の必死の歩みを止めるだけの価値が私にあったのだろうか。
と。
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