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「先生。そろそろ見えてきたころだと思いますよ。」
「お、おぉ。」
考え事をしながら歩いたら案外早く着いた。
まだ考え事…今後の生活について答えが出ていないのだが。
そこには大きな建物があった。
灰色のコンクリートでできた四角いそれは冷たそうだ。
「思ったより近かったな。」
普通に歩いたら5分で着いただろう。
辺銀と歩くと50分かかる。
入り口の脇の駐輪場に自転車を止め中に入った。
その時に目に入った看板に絶句。
図書館の名前
「中川図書館」
の真下にその看板はあった。
「月色図書館」
と書かれた看板が。
しかもご丁寧に「月色」の部分が二重線で消され下の方に、月光と書かれている。
きっと、館長の仕業だろう。
その人物が度を超えて物分かりが良いのだとこれで理解できた。
相当頭が柔らかそうだ。
「先生。ぼんやりし過ぎですよ。何惚れ惚れとしてるのですか。早く行きますよ。」
こんなつまらないものに惚れ惚れするような、つまらない人間になった覚えはありません。
「はいはい。」
中は普通のごく一般的な図書館だった。
何の変りもないように見える。
そこそこ蔵書数がありそうだ。
それ以外特に感想はない。
「あ。館長」
「やぁ。辺銀君。昨日ぶり。」
き、昨日ぶり?初耳だそんな言葉。
きっと辺銀が私を正すときと同じように、
館長の言葉を正すことだろう。
「そうですね。館長昨日ぶりです。」
え?スルー?見逃すの??
「んー?今日は君、一人じゃないんだ?」
「ええ。頭の悪い連れが一人。」
「おい。」
初対面の人間にその紹介の仕方はおかしすぎる。
現に館長が片眉をヒョイとあげた。
実際にいるんだな。
あんな器用なことが出来る人間が。
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