6,委員長

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「先生。そろそろ見えてきたころだと思いますよ。」 「お、おぉ。」 考え事をしながら歩いたら案外早く着いた。 まだ考え事…今後の生活について答えが出ていないのだが。 そこには大きな建物があった。 灰色のコンクリートでできた四角いそれは冷たそうだ。 「思ったより近かったな。」 普通に歩いたら5分で着いただろう。 辺銀と歩くと50分かかる。 入り口の脇の駐輪場に自転車を止め中に入った。 その時に目に入った看板に絶句。 図書館の名前 「中川図書館」 の真下にその看板はあった。 「月色図書館」 と書かれた看板が。 しかもご丁寧に「月色」の部分が二重線で消され下の方に、月光と書かれている。 きっと、館長の仕業だろう。 その人物が度を超えて物分かりが良いのだとこれで理解できた。 相当頭が柔らかそうだ。 「先生。ぼんやりし過ぎですよ。何惚れ惚れとしてるのですか。早く行きますよ。」 こんなつまらないものに惚れ惚れするような、つまらない人間になった覚えはありません。 「はいはい。」 中は普通のごく一般的な図書館だった。 何の変りもないように見える。 そこそこ蔵書数がありそうだ。 それ以外特に感想はない。 「あ。館長」 「やぁ。辺銀君。昨日ぶり。」 き、昨日ぶり?初耳だそんな言葉。 きっと辺銀が私を正すときと同じように、 館長の言葉を正すことだろう。 「そうですね。館長昨日ぶりです。」 え?スルー?見逃すの?? 「んー?今日は君、一人じゃないんだ?」 「ええ。頭の悪い連れが一人。」 「おい。」 初対面の人間にその紹介の仕方はおかしすぎる。 現に館長が片眉をヒョイとあげた。 実際にいるんだな。 あんな器用なことが出来る人間が。
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