6,委員長

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「あ、ドーモ。」 目が合ってしまいしどろもどろしてしまった挙句、 頭の悪そうな挨拶をしてしまった。 館長はというと、じろじろ不躾に私を眺めてくる。 「辺銀君…彼女は、あなたの彼女さんか何か?」 「そんなこと僕が許しませんよ。ただの友人です。」 いつでも一言多いのが辺銀康人である。 わかっていたけどさ、人として悲しいよ、 そこまで否定されると。 「じゃあ、素直に言っていいのね…え?本当に女の子?」 「ぐふっ」 辺銀が吹きだした。ぐふっ…て。 「い、一応、オンナノコですが。」 館長は何がそんなに楽しいのか、飽きずにずっと私を眺めている。 いや、これは眺めるっていうより、睨みつけてる? 「何その格好。家じゃないのに全身ジャージって。しかも頭もぼさぼさだし。」 せっかく最近辺銀の毒舌に慣れてきたと思ったのに、 新たな敵参上ですか? 「え、でも誰かに見られて困ることもないですし…」 「はあぁ」 溜息があからさま過ぎる。 「だから僕は言ったのに。『先生はきっと後悔しますよ』って」 辺銀の囁きは聞こえない。 「恥じらいってものがないの?図書館っていう公共の施設に来るのに、その格好は周りから見て不愉快よ。特に辺銀君なんて…あなたと一緒にいるってだけでマイナスになる。」 ひ、ひどい。 「あ、辺銀君、この人ね、ジャージを…」 「館長さん。そんなの、布同士が擦れる音で僕にだってわかってますよ。」 「そうね。ごめんなさい。それで、この方お名前は?」 「あ、六篇です。」 「六篇何さん?」 「六篇美空です。」 「そう。六篇さん。辺銀君は、生きるだけで大変なのよ。もう少し彼のために何かをしてあげなさい。その1つ目が衣服を正すことね。そんな恰好で町を出歩かないこと。じゃあ、辺銀君。また後で。」 「はい。」 私よりも一回り年上に見える彼女は、すたすたと去ってしまった。結局私に話しかけてきたのは2度だけ。 名前と性別だけ。
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