4人が本棚に入れています
本棚に追加
「た、例えば?…例えば、将来どう生きるか。とか。」
「それは生き方ですよ。先生。生きるについて考える、なんて何を考えるかさえ難しいことなんです。それを先生が考えるなんて、」
「私だって考えたことぐらいあるぞ。何故生きているのか。とか。」
あぁ。何故生きている、なんてこの年になって口にすることじゃない。
恥ずかしい。
「答えは、出たんですか?」
「とりあえず、生きてみることにしたんだ。」
「かっこよく言いましたけど、答えは出なかったんですね。」
「まぁね。」
「まぁ、出たら出たで、人生達観しすぎていて嫌ですけど。」
辺銀は、サンドイッチの最後の一口を口に入れ、咀嚼する。
「で、爺先生に言われたわけですか。」
「そうなんだよ。言われたんだよ。」
「たまには外出しろ。て?」
「たまには外出しろ。と。」
そうなのだ。
生きるどうこうなんて、私には手に負えないことを話しているのではなく、
私たちは外出について話していたのである。
最初のコメントを投稿しよう!