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2,日比野茂樹
「外出をしなさい。」
「え?」
「外出をしなさい。」
「え?どうして、ですか?」
そうですか、辺銀君とは仲良くやっていますか。
それはよかったですな。
六篇さん、外出しなさい。
って、どういう経路でそんな話になったのだろう。
「診察に入る前に回答してもらったアンケートを見ると、君は月に何度も出かけないじゃないか。出かけたと思ったら近所のスーパーとか、本屋とか毎回同じところだし。たまにはどこか新しいところに出かけてみなさいよ。」
「別にいいじゃないですか。私がどこに出かけようと私の勝手です。」
「いやぁ、出かけなさい。あなたには日々の刺激が足りませんよ。」
「ヒビノシゲキ?」
ヒビノシゲキ…日比野茂樹君のことを言っているのだろうか。
彼は小学校時代の同級生だ。
「毎日毎日同じことばかりしていたら良い作品も書けないでしょうしね。」
「そ、そんなことは関係ないでしょう。」
先日、私の処女作である『青空に穴』の絶版が決定した。
「それに外出したからって、良い作品が書けるかどうかなんてわかりませんよ。」
「絶対に書けますよ。」
何故そんな断言ができる。
お前は小説を書いたことがあるのか。
「言ったでしょう?小説家に必要なのは、経験と紙とペンなのですよ。外出して経験を積めば自ずと良いものが書けるはずです。」
外出しただけで経験に含まれるなんて、初耳である。
そうだったんだ。
「実際、あなたが辺銀君と知り合いになったことは、あなたにとってプラスに働いたでしょう?」
「えぇ。まぁ。」
「じゃあ、外出しましょう。」
何故、そうなる。
納得できない。
まず、外出なんて面倒なだけで必要性がないではないか。
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