3,先生に穴

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「そもそも、今何か書いてるんですか?」 「一応。でないと生活が危ないし。」 「何を書いてるんですか?後、一応なんて言葉は使わない方がいいですよ。一応、なんて言葉を使うと人間強度が落ちますから。その言葉は曖昧すぎるんです。多用しすぎると信用も落とすことになるので要注意、です。」 「えっと…青空に穴、の続編。」 辺銀の表情が凍る。それを見て私も凍る。 「え、なに?駄目デスカ?」 「何故、絶版になったものの続編を書いているのですか。売れるわけないでしょう。素人の僕にだってわかりますよ。先生は何ですか?青空に穴しか書けないんですか?」 「因みに、続編は大空に穴。」 「知りませんよ。そんなの。たった今あなたの行くべき場所が決まりました。否、決めました。先生、あなたは今日の午後図書館に行きます。」 これまでの会話の賜物か、この頃辺銀がツッコミを入れてくれるようになった。 「今日?」 「今日。あなたは小説家だと言っているくせに勉強が足りません。発想も足りません。だから、続編なんてものを書こうと思ったのですよ。いいですか?あなたはこれから図書館に行って、次回作の案を出してもらいます。小説家として成り立たなくなったから、と言って僕の食費に手を出されたら堪らないですから。」 それもありだな。なんてことは決して思ってません。 「まずは手短なところから、一番近い月光図書館に行きましょうか。と言っても僕の世界はぼやけているので精々案内できるのはそこまでですよ。他の図書館に行きたければ館長に連れて行ってもらうのがいいですね。」 辺銀は月の光を見てからというもの、図書館のことを月色図書館から月光図書館と、呼び名を変えていた。
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