序章

6/9
前へ
/27ページ
次へ
その夜、異変は起きた。。 「あ・・・ぐあ、あ、あ、あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 か細い喉から悲鳴が上がる。老人の身体を炎のような激痛が走る。 胸が熱い、痛い、苦しい。 胸を掻き毟るが皮膚が破け出血してさらに痛みは増す。 「おじいさん、おじいさん!しっかりおしよ、もう少ししたらお医者様が来てくれるからね!」 老婆は老人の手を握り声をかける。それで老人の痛みが和らぐことはない。 「つ、づき・・・満月・・・月、ああ―月月月!!!」 壊れたラジカセのように月の名を呼ぶ。その名前を口にするたびに痛みがほんの少しだけ和らぐのだ。 「私ならここにいるわよ。」 玄関を開け放ち両手を広げ愛しむような微笑を浮かべた月がたっていた。 「月!お爺さんが大変なんだよ、お前も声をかけておやりよ!!」 「無駄よ、だってそのお爺さんもうすぐで化物になっちゃうもん。」 「・・・!?」 「胸を見てみると良いわよ。面白いものが見れるから。」 老婆は老人の掻き毟る手を押しのけ胸をはだけさせる。 「ひっ・・・!!」 異様な光景だった 老人の胸に直接埋め込まれたような一粒の種からビッシリと覆うように根がはってあったのだ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加