１０年分の愛を

記憶

吉井くんの靴はなかった。

ということは外──？

あたしは靴を履いて運動場を探し回った。

アスレチック、ブランコ
体育館

そしてやっと見つけたのは探し始めてから１５分を過ぎた頃だった。

彼はひとり体育館裏の、まだ蕾ひとつない桜の木の下に静かに立っていて

まるで

誰かを待っているようだった。