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門下生達の目には、二人が人間離れした動きに見えていた。
近藤からはじまり腕のたつものが軒を連ねる試衛館の人間。
その中でも麗は変わっていた。
天然理心流の剣術を元に、オリジナルを加え、改良している剣だ。
太刀筋が読めず自由奔放とも言える型。
だが、体の柔軟性を使い相手の急所をとらえる。
一風変わった剣術を使う。
そして、天性の才能をもつ沖田。
太刀筋が綺麗な沖田の剣は相手に読まれやすいが、しとめるとなったら絶対的な三段突きを会得している剣である。
共に刃を持てば目つきが変わるという、内に秘める狂気は未知数。
二人はまだ19歳だ、若さとは裏腹に剣の才能に恵まれていたのも事実である。
木刀を壁にかける二人の姿に門下生は次々に唇を動かした。
「あの二人がまともに戦ったらどっちが勝つんだろうな……」
「沖田先生だろ」
「いや…翁田先生だろ…」
「そう言えば漢字が違うだけで読み方は一緒だよな、あの二人…それにお似合いだよな…」
「でも久しぶりじゃねぇか…あの二人がまともに話してんの見たのは…」
「確かに…ここ最近なかったもんな…」
門下生の間では口々に、噂が飛び交った。
《二人は恋仲の関係だ》
《実は兄弟だ》
どれも違うが、勝手に噂をう呑みにする門下生は多々いた。
そして、門下生達は密かに麗に対し、恋心を抱く者もいた。
女を捨てていると言われても麗は容姿が綺麗な方だ。
がさつな性格だが、面倒見のよい性格に門下生達は目をとろんとさせていた。
人の恋心は読めるのに、恋愛に疎い麗はその気持ちに全く気づいていないのだが…。
そんな麗は近藤の部屋の前にいた。
「なんで総司がいるの」
「私も呼ばれたんです、その言葉そっくりそのまま返しますよ」
「減らず口」
お互い憎まれ口をたたきながら、近藤の部屋に足を踏み入れた。
八畳ぐらいの部屋には近藤や土方、そして井上の姿があった。
なに…この雰囲気…
近藤と対面して座る二人だが、途端に部屋の障子が開いた。
「すみません…遅くなりました」
山南さん…
井上の隣に眼鏡をかけた人物、山南は軽く頭を下げながら腰を下ろした。
山南の後にはぞろぞろと、原田や永倉、藤堂といった言わば、お馴染みの顔が部屋の中に足を踏み入れた。
近藤は咳払いを一つ、つくと唇を動かした。
「集まってもらったのは、他でもない「たのもう!!」
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