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……朝……
彼女はうっすらと目を開け、周りを見れば小窓の障子からは朝日が射し込んでいる。
1863年。春。
彼女の寝る部屋は六畳ぐらいのもので、狭い。
髪の毛を掻きながら廊下を歩く彼女の名は、翁田麗。
がさつな行動とも言えるが、特に気にする様子もない。
ガタリと障子を開ければ、騒がしい部屋に彼女は足を踏み入れ、胡座をかきながら座った。
「眠い……」
「……麗……。いい加減胡座をやめたらどうですか」
「あー、……そのうち……」
麗の隣に座る青年は、麗の行動に眉を寄せていたが、フッと笑えば箸で麗のお膳の魚に手をつけた。
「もらいー」
「あげる」
「……はっ??」
麗の行動に青年は目をまん丸とさせたが、魚を丁寧にサバけば口に含んだ。
「つれないですねぇ……。なにか変な物でも拾って食べたんですか」
「別に……。食べる気がないから総司、私のお膳の物、食べなよ」
麗はコクリと喉にお茶を通すと部屋を出ていった。
゙変な物を食べたんですね……″
麗の隣に座っていた総司と呼ばれた人物は、麗の背中を見つめていたが、また魚を口に含んだ。
「なぁ、総司……麗の奴…変だろ」
「原田さんも思いますか」
「あぁ、変なもん食ったんだろ」
「原田さんもやっぱりそう思いますか??がさつな…全く…女ではありませんね、麗しいと名にありながらまったくです」
総司は鼻で笑っていたが、総司の前に座る原田と呼ばれた人物は溜め息をついた。
原田は総司と違って我体も良い、溜め息も大きいものだった。
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