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「頭いたいわ……」
また門下生が増えてた……
額をさすりながら騒がしい座敷から避難した麗は、石段に置く下駄に足を通すと外に出たが、試衛館の表札を触った。
ぼろぼろ………お金ないのに食客ばっかり増えて……
表札は木材だ。雨風を浴びるせいで字も滲んでいた。
「なにやってんだよ、表札触る趣味があんのか」
「土方さん……」
麗の目の前には土方と呼ばれた男が木刀片手に、立っていたが、漆黒の着流しを身に纏う土方と呼ばれる人物の頬にはカスリ傷が多数存在した……。
「趣味とかじゃなくて、ぼろぼろだから……。れに食客がまた増えてましたけど」
「俺は知らねぇな」
でた……任せ……
土方は、ふらりと試衛館の中に入っていくが、麗は軽く舌打ちをした。
「練習なら道場ですればいいのに、また特訓ですか」
「まぁ、そんなとこだ」
「凄い特訓ですね、毎日お疲れ様です」
どうせ女関係のもつれでしょ……傷が増えてる
土方は振り返らず軽く手をあげるが、背中を見つめる麗は白い目を向けると左手にある道場の中に入っていった。
木刀を片手にとる麗はす振りを繰り返した。
「飯食わねぇとぶっ倒れるぞ」
道場の入口に立つ原田は、草履を脱ぎ捨てると麗の元によった。
「無視か、聞いてんのか」
「邪魔しないで下さいよ、木刀が当たりますよ」
「お前ちったぁ、女らしくするとか出来ねぇのか、もっとこう可愛らしく返事が「必要ありませんね、それにそんなこと親に教わったことありませんから」
「あぁ―生意気。……可愛げがねぇ」
素振りを繰り返す麗に対し、原田は髪の毛を掻きだした。
「左之、言っても無駄、無駄」
道場の入口に背をもたれる人物は、呆れたように声を発せば壁に掛かる木刀を握った。
「麗、勝負」
「永倉さんはなにを企んでるんですか」
麗の発した声に永倉と呼ばれた人物はニヤリと笑った。
「俺が勝ったら今日の床掃除はお前がやれ」
でた……さぼり……
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