更科院で始まる朝

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 更科院の朝は静かだ。  現在午前5時。皆はまだ夢の中だろうか?  気持ち良さそうに小鳥達が囀-サエズ-っている中、俺は朝食の準備をする為、台所に立って米をといでいる。  ども、更科院の管理人、更科空人-サラシナアキト-っす。  炊飯器の中を拭いてから、ボタンを押して急速炊飯にセット。これでご飯は大丈夫かな。  一区切りついたのを確認して、そろそろお手伝いさんを起こそうと、エプロンで手を拭いてリビングを後にする。 「つめたっ」  ドアを開けて廊下に出ると、まだ冷たい床に驚く。4月とは言え、この時間帯はまだ流石に冷え込んでいて、靴下を履き忘れた素足には肌寒い。  慌ててスリッパを履いてから、ギシギシと階段を軋ませて2階へ上がると、見える部屋は3つ。  その中でも1番近い部屋を目指す。  扉には、名雪-ナユ-、捺-ナツ-の部屋と、二人の名前のネームプレート。  そこへ、コンコンコンと3回ノック。  まだ寝てるのか? まぁ昨日まで休みだったからしょうがないが、起きて貰わないとこっちも困るし。  とりあえず、もう一度、3回ノック。 「ふぁぃ……」  よかった、とりあえず起きてくれたみたいだな。  キィと開かれる扉。そこから顔を覗かせたのは、少し色素の抜けた長いの髪の少女、名雪-ナユ-だ。 「ふぁ。今起きました、すぐ行きます……」 「ついでに捺-ナツ-も頼む」  コクリ、彼女が縦に頷くのを見て、俺は階下へと踵-キビス-を帰す。  その背後、パタッと閉められたドアの奥から盛大に何かを崩す音が響いた。 「朝なんだから静かにしろよー」  と声をかけて、再び階下へ。  まったく、部屋の中はちゃんと整理されてるのかね? 兄さん、少し心配。主に更科院が。  降りきった所で、野郎共の部屋を駄目元だが一発殴っていく。手に若干痛みが残るが、今日も諦めてそのまま再びキッチンへ。このノック1回じゃ、起きてくれた試しがない。  卵を4ヶ取り出し、ボウルに移して箸で掻き混ぜる。それに醤油と砂糖を【適量】入れてと。  フライパンに油を軽く引いて、温めたら卵を一気に入れ、形を整えていく。
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