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夜の商店街を歩く
人通りも疎らで、その歩き易さを実感する
路上ミュージシャンが、自分の形を歌っている
何かに伝えようとする歌は、それはきっと素晴らしいのだろうが、僕にはまるで響かなかった
一人、足早に商店街を行く
今が夜なのを忘れる程、確かな明かりがそこにはあるのに、ただただ不安で、決して歩みを止めなかった
誰に伝えるでも無く、聞こえ、過ぎてく歌は、夢だとか、悲しみだとかを象るもので、だけど僕には雑音だった
例えば彼が、僕と同じ気持ちを込めたのだとしても、今の僕には届かないんだ
一人歩く
ただただ不安だった僕の、中はそれは醜く歪んで、
あの人の別れ際の、その言葉も姿も、それは醜く歪めてたんだ
他人の思いを受け取れる程の隙間が、歪みで全部埋まってしまって
夜の商店街を抜けた
街灯が途絶えがちの闇夜を進む
速度が少し遅くなる
これは何時もの帰り道
だから迷わず帰れるんだ
今はそれだけで、それだけが保たせてくれてるんだと思えた
夜の商店街を振り返る
不自然な明かりの親切な道は、気持ち悪いと思えた
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