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「仕方ないか……」
桃はひとつ、
小さな深呼吸をすると。
『気をつけてね?
あめもよーくん!』
そう言って、ウィンクひとつ。
ぱちんっ。
再び、桃の声と
口調が別人の様に変わった。
やはり言葉の勉強をする過程で
様々な人と出会うらしい。
その影響か、桃は色々な人の
口調やトーンをほぼ完璧に
真似ることができる。
……んなことは
どうでもいいけどな。
「--「あめ」じゃねえ。
……「あま」だ」
吐き捨てるようにそう言った
俺は、玄関の扉を蹴り開ける。
鉄製で出来たそれは
そこら中が錆び付いており、
何か破片のようなものが
ぱらぱらと落ちてきた。
気にせず玄関を後にする。
「…………」
後ろに残した心残りに
ほんの少しだけ気持ちを
引きずられながら、
俺はそのまま一人寂しく
帰路へとついていった。
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