だからなにがしたい。

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  どうしてこんな、 素敵なあだ名で呼ばれるように なったのか、というと。 簡単に言うと、俺のミス。 いや、逆に自分の待遇の悪さを 他人のせいにする方が なんだかズレている 気がしないでもないが……。 とにかく俺はやらかした。 入学式当日、そのときに。 ほら、初対面の人間同士が いきなりランダムにクラスを 振り分けられて……やるだろ? 自己紹介。 『気軽に『遥』(ヨウ)って  呼んで下さい!』 って言ったまでは、 まだ良かった。問題ない。 当然『ヨウ』と呼ばれる訳だ。 クラスメイトが俺を呼ぶ。 『よう!』 俺は返事をするだろ? 『お、どうした?』 クラスメイトは言うわけだ。 『いやっ、お前じゃねぇ』 俺は困るわけだ。 『なるほど……』 話しかける言葉として、 挨拶の一つとして。 『いよう!』とか『よう』 というのは比較的頻繁に 使われる。 つまり、俺の提唱した愛称は、 事故多発ワードだったんだ。 そこからは大変だった。 呼ばれたと思ったら違い、 違うと思ったら呼ばれてて、 今度は違うと思って呼ばれ 呼ばれたと思ったら……。 で、なんだかんだ言って 基本的には『等々力』とか 『等々力くん』とか、 名字で呼んでいる奴の方が 多かったから、 『よう!』って聞こえても 無視するよう心掛けていた。 『遥!』 『………………』 『遥!?』 『………………』 『おい、遥!』 『……(お、老いよう?  一体誰の老け具合が  どうしたってんだ?)』 『聞いてんのか遥っ!』 『(聞いてんのかYO! って、  …………くくく、  ラッパーでもいんのか、  うちのクラスには……)』 そして、この結果だ。
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