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「そんなときにあの店に行ってたわけだ。」
「?」
その日は憂さ晴らしに城を抜け出し、城下の下町に来ていた。
小腹がすいたので、近くの喫茶店に入りランチセットを頼む。
実はここの隠れ常連で、お気に入りの席に座りマスターのコーヒーを飲む。
これがまた絶妙なのだ。
ヴェル辺りには、毒味もしてない料理などと怒られるんだろう。
「待って!じゃああなたはうちの店知ってたの?」
「あぁ、だからお前がどういう人間か知ってたんだ」
「あちゃー…それなら私の数々の失敗も見てきちゃってるのかぁ」
「そういうわけだ、とにかくもう諦めろ」
「うぅ…家帰りたい…お姫様とか何それ美味しいの?だし…」
私はあの喫茶店を継いで、下町のみんなとワイワイしながら暮らすつもりだった。
たかがお茶こぼし1杯、されどお茶こぼし1杯。
もうあの生活に戻れないと思うと、寂しさが募る。
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