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「あらーごめんあそばせ!」
「菖蒲様がいらっしゃるなんて気づきませんでしたの。」
「ご機嫌麗しゅう菖蒲のお妃様」
(はぁ~…めんっどくせー…)
白っ々しい美辞麗句を並べるくらいなら、さっさとこの場から消えてほしい。
しかし、そうもいかないのが現在の状況である。
ある日突然、次期国王のリュオネル王子殿下と結婚したおかげで、案の定貴族のご令嬢からやっかみを受ける毎日だ。
今日も王子へ面会に訪れるご令嬢方は、王子の執務が終わるまで「私で」暇を潰すつもりらしい。
本当にいい迷惑だ!
私は王子殿下の妃となり、王族のみ纏う紫の衣を着ている。
豪勢な宝石や衣装を身につけるのは、庶民の性なのか嫌だった。
それではせめてと侍女たちに泣きつかれ、このシンプルな黒と金の刺繍の略装の衣となった。
略装ながら女性としての美しさを引き出している、誠に見事な一着だ。
(着るべき人が着ればだけど私じゃねぇ?)
直系王族ではなく外部からの者は、薄色紫衣を纏うのが普通である。
しかし、レンカはなぜか濃色の紫衣を着せられている。
全くもって不可解な事実であり、周囲で首を傾げる人も少なくない。
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