219人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
また、妃となったことで、一つの部屋を賜った。
その部屋の名前が「菖蒲の間」であることにちなんで、「菖蒲のお妃、菖蒲の君」などと呼ばれるようになった。
困惑している私に対し侍女さんたちは、
「殿下のご寵愛を一身に受けておられて羨ましいですわ」
とにっこり微笑まれて返された。
生温い視線がそこ彼処から向けられて痛い。
え、あの、正直いらん…です。
部屋の名前を取って呼ぶのは、王族の慣習らしい。
ちなみに現在の王妃様の別名は「凰妃」である。
この国の象徴である、鳳凰の鳳が王を指し、その番いである凰が王妃となる。
でも皆さん王妃様と呼ぶから、そんなに気にしていないとのことだ。
(でも私は家に帰りたいわ…)
そんなことを言えるはずもなく、本日もぶらぶら城内を散歩する。
最近の私の日課であり、唯一護衛もいなくて気が抜ける瞬間である。
最初のコメントを投稿しよう!