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回転速度は上昇し続け、かん高いモーター音が聞こえ始めた。
「ブラック、右手の光を掴めぃ!」
じいやの言ってることがわからなかったブラックは自分の右手を見やった。
そして右手付近に浮いていた謎の白い光を見つける。
「なんだこれ」
いいながら虫でもつかみ取るようにぐわしっ、と掴むと……
「バトン?」
ブラックの右手にあったのはリレーで使われるようなバトン。
……いや、どちらかというと剣の柄だ。
「剣をイメージしなそい」
じじいの指示にブラックが従うと、柄の先端から長さ1メートルほどの白い光の刃が出現した。
「おぉ、それビー〇サーベル?」
「いや、ライトセ〇バーだろう」
ピンクもブルーもアウトとしか言えない。
「……これはビームセイバーじゃ」
……はい、3アウト~!
「これいろんな意味で危ないな」
人に向けて振り回したら危ないし、名前的にもアブナイ。
こういったことにブラックは敏感である。
「ちなみにこの刃の長さは前日の晩御飯の豪華さで変わるぞい」
「なんでよっ!?」
ピンクが問い掛けたが、じじいからの返答は無かった。
使い終わったら先程のボタンを垂直にしてまた押し込めば消える、とじじいは説明する。
ブラックはその通りにしてビームセイバーをしまった、というかボタンを押し込んだら勝手に消えた。
「まぁ次は……」
続けざま、じじいはブルーのバックルについてるボタンを押した。
「ブルーは左に受け流しなそい」
なんだか懐かしい響きであるが、ブルーはむしろじじいの言葉を受け流した。
要するに、ボタンの出っ張りを左に倒した。
ブラックの時と同様、中の風車が回転しだす。
先程との違いは回転方向。
さっきは右、今は左に回っている。
「今度は何が出てくんの?」
ピンクは興味津々だ。
回転速度が先程のブラックと同じくらいにまで上がり、高い音と共にブルーの左手の位置に黄色の光が現れる。
それをブルーが掴もうとした。
が、光が逃げた。
「なぜだ!?」
ブルーは光を追いかけた。
微妙に速いし、フラフラと揺れ動く様はまるでハエのようである。
しばし黄色い光と格闘していたブルーだったが、やがて光は空高く舞い上がって消えてしまった。
「え? これどゆこと?」
「まぁ、そんな日もある」
手を後ろ腰に組んでいたじじいはなぜか遠い目をしていた。
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