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おじいさんはそれぞれの目を数秒間ずつ見つめ、語る。
「この中では……リーダーはお前さん」
指指されたのは蒼馬だった。
「なんでオレ?」
「ヒーロー物のリーダーはレッドと相場が決まっておる。しかし、そのレッドがおらん。ならばレッドのライバル的なイメージの強いブラックがリーダー代理を務めればよい」
そういうものだろうか。
しかもじーさんの答えは三人が聞きたかったものとはかなり違う。
「リーダーは誰でもいいけどピンクと青と黒は何を基準に選ばれたの?」
「……特性じゃな」
「特性?」
「特性とはゴミレンジャーに変身した時に本人だけが使える特殊能力のことじゃ」
まりやんとじーやんの会話は続き、男二人は黙って聞いていた。なぜなら聞きたいことをまりやんが聞いてくれてたから。
「じゃあそれぞれ何が使えるの?」
「うむ。ピンクはテレパシー、ブラックは未来予知、そしてブルーは瞬間移動」
もしもそれが事実ならヒーロー戦隊というよりはエスパー集団である。
老人は最後にこう付け加えた。
「最初のうちは笑ってしまうほど貧弱な力しか発揮できんがの」
みんな黙ってしまった。
かなりの急展開である。
なんだかついてきた謎のじーさんからエスパー能力貰いました、なんてそうある話ではない。
しかし三人とも、この老人が言ってることを疑っていなかった。
それはなぜか。
みんな徹夜明けで判断力が鈍っていたからである。
ペッパーズがおもむろに目薬を取り出し、点眼した。
それを見て思い出したかのようにまりやんと蒼馬も自分の目薬を取り出した。
「オレは未来予知よりドライアイにならん能力が欲しかった」
藤原蒼馬はアホであった。
「仕方ないですよ。ドライアイはオレたちの宿命の敵……いや、強敵と書いて友と読むべきものですから」
ペッパーズは苦笑している。
彼ら怪盗苦情対策部、略して怪対は日々パソコン画面に向かっていた。
それは昼夜を問わず、時には日を跨いで、労働基準法など存在していないような空間で頑張っているのだ。
怪対メンバーは他の部署の人間から親しみを込めてこう呼ばれている。
『ドライアイ・ソルジャー』
「うちらはまだいいよ。パテさんとヨッシーさんは今も戦場よ?」
怪対メンバーは今ここにいる三人以外にあと二人いた。
正式メンバーではないが、定年退職した前部長の後任の人間も明日になればやってくる。
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