36人が本棚に入れています
本棚に追加
「あたしもね、浮気された事あるよ。」
そう言いながら女は俺に馬乗りになる。
長い髪が胸に当たってくすぐったい。
「本当にね、頭が真っ白になって狂ったように泣き叫んだ。
信じてたから余計に。
他の女抱いた体がゴミみたいに汚物にしか感じられなくて、相当ショックだったな。」
「俺は汚くないの?」
「なんなんだろ。
自分が浮気相手の立場になったら平気なんだよね。
全部理解した上でしてるからかな。
優越感っていうのかな。
嫌な女でしょ?」
全て言い終えると再び笑みを浮かべ、唇を落とした。
きっとサヤも俺の事をゴミのように汚く思っただろう。
人間というのは本当に身勝手な生き物だ。
身勝手に人を傷つけ、平気で人を裏切る。
俺のような簡単な約束も守ることのできない同じ人間がこんなにも身近にいたことに安心した自分がいたことに嫌気がさす。
ただただ天井を見つめながら、一人で住むには広すぎるあの家をどうしようか考えていた。
思い出の詰まったあの家を離れる勇気が俺にはあるのだろうか。
サヤが帰ってきてくれるのなら、今なら煙草をやめることが出来そうだ。
「禁煙して。」が口癖の女だったから。
最初のコメントを投稿しよう!