第一章 -side ヒロト-

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鍵を開け、真っ暗な部屋を目の当たりにし、酷く落胆している自分がいた。 いつもの「おかえり。」の声も聞こえることは無い。 人の気配は無いのに、昨日とは違うなにかいい香りがする。 花柄ののれんをくぐると、ラップのかけられたハンバーグとサラダが目に入った。 ラップには小さなメモ用紙が貼り付けられており、そこにはこう書かれていた。 〔ヒロトがいない時に、ゆっくり荷物を取りにきます〕 ただそれだけ。 頭に浮かんだのはやはりサヤがご飯を作っている姿。 ‐「サヤに会いたい。」 その気持ちが頂点に達し、気づけば携帯を握り耳に当てていた。
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