第一章 -side ヒロト-

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外は雨。 地獄の朝は何とかやり過ごした。 事務所に着くと、親方はもう現場に出る寸前でドアの前で「何か言うことは無いのか?」とでも言いたげな顔で俺を睨みつける。 すぐさま深く深く頭を下げ「二度としません。」と、今度こそ破る事の出来ない約束をした。 昔、誰かにもこの言葉を言った気がする。 ‐「もうしない。約束する。」 ‐「本当に?信じていいんだよね。」 ‐「サヤ、信じて。」 この2ヶ月後、俺は同じ間違いを犯す事になる。 それがその昨日。 「ばれなければいいだろう。」 そう軽く考え女と遊んでいたのだ。 サヤとの付き合いは高校2年からの5年以上で結婚を考えていた。 プロポーズは照れくさくてしていなかったが去年のサヤの誕生日、ダイヤの指輪を渡した。 サヤは「貯金苦手なくせに。」と、顔を伏せて泣いた。 結婚する前に…と、本当に軽い気持ちでコンパに出向き、少しタイプの女がいると解散後女を誘いそのままラブホテルへ直行。 一通りの行為を済ませ、何食わぬ顔で家へ帰るとサヤはいつも寝ずに俺を待っていた。
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