第一章 -side ヒロト-

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「おかえり。」 これが一番安心出来る瞬間。 サヤがいるのが当たり前になっていて、何があってもそばに居てくれると甘えていたのかもしれない。 いつもは、やましいメールはすぐに削除するのだが、なぜかその日は「後で消せばいい。」そう思い、いつものようにサヤを後ろから抱きしめる形で眠った。 次の日、仕事用の携帯とプライベート用の携帯の2つ持ちだった俺は、なぜか仕事用の携帯だけを持ち、もうひとつの携帯のことなどすっかり忘れ家を出てしまう。 それに気づいたのは家を出てからで、その日はたまたま仕事が忙しく取りに帰ることも出来ないまま、終わるのもいつもの2時間ほど遅くなってしまい、メールを消さなかったことを酷く後悔して恐る恐る家路についた。 「ただいま。」 そう声をかけるも仕事を終えて帰っているはずのサヤからの返答は無く、ゆっくりとのれんをくぐりリビングへ足を踏み入れた。 そこには、小さく声を漏らしながら涙を流すサヤの姿。 一瞬で背筋が凍り、なぜ泣いているのかすぐにわかってしまう自分に嫌気が差す。
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