第壱章~たった一人の超上決戦~

8/9
前へ
/15ページ
次へ
…。 何時間、たったのだろうか。 もはや、熱い感覚すらない。 血潮がハッキリと見える。 だか、死はない。 ただ、武器だけは握り締める。 戦う理由。 そんなものは、忘れた。 いや、<亡く>した。遥か昔に。 「……。」 身体中の防具は、既にボロボロ……直撃こそもらいはしないが、奴のとめどない猛攻を全て完全にかわすのは不可能。 「……。」 実質、一週間もの〝時〟が過ぎていた。 遥か遥か……向こうの大地。 黒龍は数日前に倒れ、仮の平和がたもたれていた。 仮の平和。とは言っても人々にとっては紛れもなき平和。 だが違う。この者が敗れたならば、平和は崩れる。 一週間もの激闘。 いや、激闘という安い言葉で片付けてはならない。 「……。」 だが、紅龍とて無事ではない。 無敵など有り得ない。 角は全てみる影もなくへし折れ……片方の魔眼は潰れ、堅き紅の堅・重胸殻には十字の傷。 紅龍の猛攻とていつまでも続かない。 だが、意識だけは忘れていない。 もうだめだ、そんな弱音は持ち合わせてはいない。 火山が、一斉に噴火を始める……。 この辺りも安全地帯とはいえない。 だが、ここで逃がせば……安息なる明日はない。 「……潮時、だ。」 狩人が目をはっきりと……瞳に意志を宿す。 盾を捨て、独龍の刃を両手で持つ。 既に手も火傷だらけ。皮膚が溶けかかっている。 <ギヤァアアアアァァァッッッ!!!> 火山活動すらも早めるその雄叫び。 狩人の覚悟に反応したのだろうか。 紅龍もこれで終わりにするつもりのようだ。 その見るも無惨、飛ぶのもやっとのような翼をはためかせ、紅龍は天高くへと舞い上がる。 二つの強大な力……今、最終決着を迎える。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加