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…。
何時間、たったのだろうか。
もはや、熱い感覚すらない。
血潮がハッキリと見える。
だか、死はない。
ただ、武器だけは握り締める。
戦う理由。
そんなものは、忘れた。
いや、<亡く>した。遥か昔に。
「……。」
身体中の防具は、既にボロボロ……直撃こそもらいはしないが、奴のとめどない猛攻を全て完全にかわすのは不可能。
「……。」
実質、一週間もの〝時〟が過ぎていた。
遥か遥か……向こうの大地。
黒龍は数日前に倒れ、仮の平和がたもたれていた。
仮の平和。とは言っても人々にとっては紛れもなき平和。
だが違う。この者が敗れたならば、平和は崩れる。
一週間もの激闘。
いや、激闘という安い言葉で片付けてはならない。
「……。」
だが、紅龍とて無事ではない。
無敵など有り得ない。
角は全てみる影もなくへし折れ……片方の魔眼は潰れ、堅き紅の堅・重胸殻には十字の傷。
紅龍の猛攻とていつまでも続かない。
だが、意識だけは忘れていない。
もうだめだ、そんな弱音は持ち合わせてはいない。
火山が、一斉に噴火を始める……。
この辺りも安全地帯とはいえない。
だが、ここで逃がせば……安息なる明日はない。
「……潮時、だ。」
狩人が目をはっきりと……瞳に意志を宿す。
盾を捨て、独龍の刃を両手で持つ。
既に手も火傷だらけ。皮膚が溶けかかっている。
<ギヤァアアアアァァァッッッ!!!>
火山活動すらも早めるその雄叫び。
狩人の覚悟に反応したのだろうか。
紅龍もこれで終わりにするつもりのようだ。
その見るも無惨、飛ぶのもやっとのような翼をはためかせ、紅龍は天高くへと舞い上がる。
二つの強大な力……今、最終決着を迎える。
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