田舎から都会へ

5/5
前へ
/109ページ
次へ
それに私は、もう一点。 気になって居た事がありました。 「うわ、風呂めちゃめちゃ広いよな!」 「……」 主人はすっかりはしゃいで居るように見えました。 が、私は。 「このお風呂、いやだ……トイレも嫌……」 昔、幼い頃に訪れた 母の田舎の、親戚宅の水回り。 夜は怖くてたまらず、極限まで尿意を我慢した、あのトイレ。 何故かそんな過去の出来事が、一瞬でふと戻って来たような。 「このタイルが……なんか陰気で嫌やわぁ……」 青や水色やの寒色系で 一つ一つは石のように丸みがあり、同色系統の砂を散らしたような模様があるタイル。 それらが灰色の目地の中に散りばめられ、一面をモザイク状に敷き詰められたレトロな床。 ちなみにバスタブもまた懐かしい、銀色のステンレス。 ……広くて、窓も風呂場にあるまじき大きさな事もあり、時間帯柄陽光もたくさん入って明るいのに。 寒色系と銀色のコントラストが酷く陰気でした。 「あ、水回りリフォームするそうですよ。あとLDKのフローリングも」 もう……どうしてこう、絶妙のタイミングで……。 気が付いたら、その場に不動産屋さんの社長まで来て居て 仮契約も済ませてしまって居ました。 _
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加