田舎から都会へ

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例の物件は、本当にその場から目と鼻の先にありました。 見たところ、少し年季の入った普通の戸建てのようです。 只、中に入る前に外……路地に面した玄関の横辺りから 南側の広いバルコニーに向かって階段が伸びて居た点にだけ「ん?」となりました。 「おお、広い!! いいじゃんいいじゃん!」 「ちょっ……! でも値段がさ……」 「俺が頑張れば何とかなる範囲!」 確かに、広い。 場所も申し分ない。 ここであれば、主人は通勤に一時間も掛かりません。 子供二人の動きも、乳幼児の時に比べれば随分と激しくなって居ます。 当時の2Kを手狭に感じて居た事は、確かです。 が、私はその時どうしても 手放しで『見つけた!』とは喜べませんでした。 それは、LDKからだと一階の全ての部屋を通らなければお手洗いに行けない間取りだと言う事。 要するに独立した部屋が無い。 二階を寝室にするにしても、二階の一室にはドアが付いて居ないので 階段をまともに上り下り出来ない上、動きも活発で恐怖心の無い一歳の子供が危険。 よって和室を寝室とするしかありません。 当時は子供もまだお昼寝をして居たので布団も上げずでしたし またお恥ずかしながら私は掃除があまり得意ではなく、特に寝室となれば散らけて居る事が多いので 人が来る際、慌てて全部掃除しなければならないような間取りに少し怯んでいました。 「こんだけ広ければ、お前も普通掃除するだろ」 ……「普通」と言われるともう、頷く事しか出来ませんでした。 _
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