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声のした方を振り向くと
雨に濡れた犬
否
一人の人間が立っていた
男とも女とも見て取れる、中性的で整った綺麗な顔立ち
男の癖にどこか色香を漂わせていて、笑みを浮かばせているその表情には妖艶たるものを感じる
そして…
切長な瞳からは迷いを見せない真っ直ぐな光が放たれている
何故か
俺はそいつから目が離せ無かった
何故かなんて分かる筈が無い
「お兄さん?」
「何だ?」
フと声を掛けられ、ハッと我に返るも冷静を装い相手から視線を反らす
「僕に見惚れてた?」
「あり得ないね」
「つれないね。お兄さん。ねぇ、それより僕の事拾ってよ」
「断る。何処の馬の骨とも分からない奴を家に上げる訳無いだろう。それに…」
「俺は寂しくなんか無いって言いたいんでしょ?」
「…」
「隠してるつもりでも僕にはバレバレだよ、お兄さん。いつも…一人で寂しがってるでしょ?」
「有り得ないな」
「僕は、慎悟。本当はね?お兄さんを見た時からずっと気になってたんだ。気になって…ずっと見てたら…お兄さん、いつも無表情。何でか凄い気になって今日話しかけようとした時にハッキリ分かった。お兄さんは寂しいんだってね」
引き止めるよぅに俺の服を掴む
「それに、お兄さん…きっと僕と一緒だよ…。同じ事を繰り返す日々に飽々してるんじゃなぃ?僕となら、楽しくなるよ」
言うと今度は、幼い子供のように無邪気な笑顔を浮かばせ俺を見つめた
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