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チリリン……ーー
可愛らしい控えめな音が
頭上に聴こえた
「いらっしゃいませ」
他に客がいなくて
開店前だったのかと
不安になって
カウンターにいるマスターの顔をチラリと見た
「大丈夫、営業中です
お好きな席へどうぞ」
不安を感じ取ったのか
マスターはにっこりと笑って
席へ促す
店内には
アコースティックギターの音色が小さく流れている
俺は窓際にある
カウンター席の1番奥の椅子に腰掛けた
ちょうどいい具合に
日が差して心地いい
「ご注文は?」
「あ、珈琲」
「かしこまりました」
あー、しまった…
本とか持ってくればよかった
と、思いつつ
窓から見える桜の木に
視線が移った
偶然にも明日には
都内の桜が満開を迎えるらしい
「お待たせしました」
「…ありがとうございます」
「この店砂糖に凝ってまして、いろいろな種類のお砂糖を置いているんですが何か入れてみませんか?」
へえ、砂糖でそんなに変わるもんなの?
「……すっきりした味が好みなんですけどおすすめ、ありますか?」
「じゃあ…」
マスターは反対側のカウンターの戸棚を開いて
角砂糖の入った瓶を取り出した
「フランス原産のお砂糖です。甘さ控えめで気に入ると思いますよ」
マスターから瓶を受け取り、
1つカップの中へ落とす
角砂糖の溶けた温かい珈琲と
4月の日差しが
俺をゆっくりと包み込んだ
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