Chapter Ⅱ

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少しだけ腰を曲げて聞いてくれるのは、彼の優しさなのか 「…お願い、します……」 僕の小さな返事を聞くと 彼は軽く笑って 後ろにまわった その時、バサッと 何かの落ちる音 「ノート落ち、 …………すげぇ」 「か、返してっ!!」 後ろを向いて 彼から引ったくるようにして ノートを奪う 「ごめん、落ちた時に ページ開いちゃって…」 心臓の音がうるさい 彼は何も言わず 無言のまま 席まで連れて行ってくれた 「本当にごめん 見るつもりじゃなかった」 席に戻った後、そう言って 深々と頭を下げる彼 「ぇ、あ…の、こっちこそすいま、せん… そ、の……び、っくりしちゃって…」 声、震えてる気がする 聞こえてるの、かな? 「でも、その絵上手いと思った」 「物語の参考になりそ、なもの…描いた…りするん、です…」 気がつけば そう口にしていて 自分が1番驚いた 「物語? 小説書いてんの!?」 会話、できてる… 「ちょこっと、だけ」 「へえ、作家さんなんだ さっきの絵、この店だよね?」 作家、なんて 僕にはかっこよすぎて もったいない
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