白と、灰色のまち

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祖母の墓まであと5分ほどの地点で、さすがに目を凝らすのに疲れてきた。 少し休憩するため、夏尾町に唯一の小さな商店に車を停めた。 エンジンをつけたまま、車を降り、自動販売機を見た。灰がかなり降っているため、ろくに目を開けることができなかったが、自動販売機の光に向かって、薄く目を開いて歩いた。 ミネラルウォーターを買おうと、100円玉を入れようとしたら、灰がすっかり詰まっていて、入らなかった。 「うわ・・・」 一瞬ひるんだが、100円玉で硬貨を入れる穴を何度もつついていると、そのまま灰と一緒に、100円玉が穴に吸い込まれていった。 しめた、と思い、続いて10円玉を2回入れ、ミネラルウォーターを買った。 やっとの思いで手に入れたそれをその場で一口飲んだ。体にすーっと染み込んでいった。 そのとき、ふと後ろを振り返ると、僕の車の横に赤い軽自動車が停まっていた。 自分の車のエンジンをつけっぱなしにしていたため、車に気がつかなかった。 その赤い軽自動車の運転席から、一人降りてきて、こちらの自動販売機に向かって、両手で頭を覆いながら、走ってきた。
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