4人が本棚に入れています
本棚に追加
祖母の墓まであと5分ほどの地点で、さすがに目を凝らすのに疲れてきた。
少し休憩するため、夏尾町に唯一の小さな商店に車を停めた。
エンジンをつけたまま、車を降り、自動販売機を見た。灰がかなり降っているため、ろくに目を開けることができなかったが、自動販売機の光に向かって、薄く目を開いて歩いた。
ミネラルウォーターを買おうと、100円玉を入れようとしたら、灰がすっかり詰まっていて、入らなかった。
「うわ・・・」
一瞬ひるんだが、100円玉で硬貨を入れる穴を何度もつついていると、そのまま灰と一緒に、100円玉が穴に吸い込まれていった。
しめた、と思い、続いて10円玉を2回入れ、ミネラルウォーターを買った。
やっとの思いで手に入れたそれをその場で一口飲んだ。体にすーっと染み込んでいった。
そのとき、ふと後ろを振り返ると、僕の車の横に赤い軽自動車が停まっていた。
自分の車のエンジンをつけっぱなしにしていたため、車に気がつかなかった。
その赤い軽自動車の運転席から、一人降りてきて、こちらの自動販売機に向かって、両手で頭を覆いながら、走ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!