家族

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 院長は言う。 「ふふふ。お二人はお若いのに、本当に素晴らしい人ですね。お二人の間にお子さんが生まれたら、その子はとてもお幸せでしょうね」 「……そうだと、いいんですけどね」  院長の言葉に彼らは小さく笑った。  それは儚い笑顔。  院長は詳しくは知らないのだ。彼ら二人のことを。二人の『悲しみ』を。 「……先生。子供達が楽しみにしているでしょうから、会いに行ってもよろしいですか?」 「あら私ったらすいません!ええ、どうぞどうぞ!」  院長は慌ててそう言うと、輝達が持っていた荷物をひったくるようにして取り、笑顔で彼らを施設内へと招いた。  強引ではあるが、彼女には悪気は一切ない。そういう性格なのだ。最初こそ面食らった輝達であったが、今では裏表のない彼女の性格をいたく気に入っていた。  ……しかし、そんな彼女にも言えないことがある。二人が孤児を、子供を大切に思う気持ちの根源を。  輝は心配げに雫に視線を向け、雫は小さく「大丈夫」と頷いた。
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