家族

5/15
前へ
/16ページ
次へ
 輝と雫は、この児童養護施設に定期的に寄付をしている。前回ここに来たのは二ヶ月前。その時、あの少年はまだいなかった。  院長は言う。 「はい。二週間前にこの施設で引き取った子で、名前は海(かい)君。七歳の小学二年生です」 「七歳……」  二人は驚きを隠せなかった。七歳といえばまだまだ幼子。物事の善し悪しはもちろん、あのような辛辣な言葉を理解出来る年齢ではない。  それに……。 「院長先生。彼は、その……なにか心に傷を負っているのですか?そうでなければ、あんな目が出来るわけがない」  輝の言葉に院長は俯く。言うべきか、言わざるべきか、それを悩んでいるのだ。 「……実は」  数秒の逡巡ののち、彼女は語り出した。彼らになら話してもいいと思ったからだ。 「彼の両親は、彼が二歳の時に他界しているんです。彼の祖父母方も皆さんすでに亡くなられていて……。それで親戚に引き取られたらしいんですが……」 「……虐待、ですか?」  雫の言葉に院長は頷く。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加