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輝と雫は、この児童養護施設に定期的に寄付をしている。前回ここに来たのは二ヶ月前。その時、あの少年はまだいなかった。
院長は言う。
「はい。二週間前にこの施設で引き取った子で、名前は海(かい)君。七歳の小学二年生です」
「七歳……」
二人は驚きを隠せなかった。七歳といえばまだまだ幼子。物事の善し悪しはもちろん、あのような辛辣な言葉を理解出来る年齢ではない。
それに……。
「院長先生。彼は、その……なにか心に傷を負っているのですか?そうでなければ、あんな目が出来るわけがない」
輝の言葉に院長は俯く。言うべきか、言わざるべきか、それを悩んでいるのだ。
「……実は」
数秒の逡巡ののち、彼女は語り出した。彼らになら話してもいいと思ったからだ。
「彼の両親は、彼が二歳の時に他界しているんです。彼の祖父母方も皆さんすでに亡くなられていて……。それで親戚に引き取られたらしいんですが……」
「……虐待、ですか?」
雫の言葉に院長は頷く。
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