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「言葉と力による両方の暴力を受け続けたあげくに、他の親戚に預けられて。でもそこでも虐待を受けて。そうやって親戚中をたらい回しにされたそうです。小学校の彼の担任の先生が虐待の可能性に気づき児童相談所に連絡して、その結果ここで引き取ることになったんですけど……」
「……その時にはもう、あんな目をしていた、と」
「……はい」
輝は納得した。少年、海があんな目をしている理由も、彼があんな言葉を知っている理由も。
彼は受け続けてきたのだ。理不尽な暴力を。
彼は言われ続けてきたのだ。心ない言葉を。
そうやって覚えてしまったのだ。辛辣な言葉を。
そうやって信じられなくなってしまったのだ。大人を。他人を。
輝も雫も、共にそれなりに裕福な家庭で愛されて育った。
だから海の胸中など、想像することも出来ない。人は体験したことしか理解出来ないのだから。
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