犯人はいない

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ぼんやりと歩いていると、いつの間にか靴底がなくなっていて、足首に紐の付いた布が巻き付いているような状態になっていた。Rは、これじゃまるでエリザベスカーラー(犬などが首を掻かないよう付ける医療器具)じゃないか、と思った。1時間前、家を出るときにはおニューの靴を履いていることでご機嫌だったのに、エリザベスカーラーを見た今は、カンボジアの孤児よりも不幸な気分だった。 あまりにもご機嫌に歩いていたので、地面との摩擦で、靴底が擦り減ってなくなってしまっていたのだ。そんな事は普通に考えれば解ることなのに、おじゃまじょドレミ状態(自分の事を世界で一番不幸な美少女、又は美少年と思い込んでしまう状態)に陥ってしまっているRには、考えが至らなかった。愚かにも、誰かが盗んだに違いない!と犯人を憎んでいる。 暫く歩くと、Sと待ち合わせをしていた霊園墓地に着いた。時間の経過と共に、悲しみが怒りに変わっていたので、この怒りを聞いてもらおうと、開口一番に言った。
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