82人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
その呪詛に何度苦しめられただろう。
そんな彼女を守ろうとした者がいた。
今宵、十六夜の月を見ていたもの、橘 友雅。
彼は八葉ではないが今は、異世界、他の時空から来た女性の側にいる。
私は、女性はすべて美しい花だと思っている。
それぞれ違う香を持ち、それぞれの美しさを持っている。
そして、私はそれに捕われることはないと思っていた。
本当の恋をしたとしても、それは無駄なことだと思っているから・・・。
そう思っていた。
桃源郷に浮かぶ月・・・情熱とはそのようなものだと思っていた。
それは龍神の話もそのようなことで、現実ではないと思っていた。
ある一人の女性に会うまでは桃源郷にあったものが、今はすべて現実にあることを思わせられた。
出会ってから、幾度も傷つく彼女を見ているうちに、彼女を守りたいと思うようになり、いつの間にか愛しい存在となっていた。
他の姫君と一緒にいるのは振り向いてくれない姫君に妬いてほしくて・・・。
私は何時から、こんなに単純になってしまったのだろう。
他の姫君の前では策士になれるのに、姫君の前ではそれも出来ない。
そんなことを考えながら屋敷へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!