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「随分遅くなってしまったな・・・。姫君・・・怒っているかな。いや、そんなことも・・・ないか。私のことなど・・・。」
気にもしていないかと思ったとき。
別に何もしていないのに、首にチクりと軽い痛みが走った気がした。
「首に・・・何だ?・・・気のせい・・・か。」
首に手をやってみるが、何もなくすぐに痛みも引いたため気にしなかった。
その頃屋敷では、背中までの烏の濡れ羽のような黒い髪の女性が、何枚も着物を重ね月を見上げていた。
この京では珍しいくらい髪が短く見えるらしい。
背中まであるのは長いと思うのだが・・・。
と思いつつ考えていた。
友雅・・・。
遅いなぁ・・・。
また女の人と・・・。
それしかないか。
友雅とは、この時空に来てすぐにあった人間だった。
青々とした木々の葉、草原の草。
その中で幼い男の子が怨霊に襲われていて、私は、大怪我を負ってその子を守った。
その頃の私は、刀の持ちかたすら知らず、まともに戦うことが出来なかった頃だった。
その頃から、友雅には助けられていた。
大怪我をした私を友雅は屋敷に運び、手当をさせ私は生き延びた。
それ以降は、私は屋敷を出た。
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