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たまたま私が思い悩み息詰まっている日、夜空を見上げるとそこには十六夜の月が昇っていた。
そして、そんな夜には友雅が私の前に姿を現した。
私を追っていつも私を探していた。
どんなに冷たくしても離れていかない人間だった。
そんなことを考えていると体が冷えてきたので部屋の中に入ることにした。
やっと私は屋敷に着いた。
屋敷の門を潜り姫君の見える庭へきた。
「まだ起きているだろうか。」
そう思いながら、姫君の部屋を見ると、そこには烏のような黒い髪の女性の後ろ姿が見えた。
おや?あの姿起きていてくれたのか。
そう思ったとき、その女性は振り向いた。
千穂殿。
姫君の名は高瀬千穂。
千穂殿には、文献にはほとんどない二対の龍が揃い、本当に京に加護を与える応龍の神子であった。
姫君は、呆れた顔を私に向けた。
・・・やっと帰って来た。
私は呆れながら、友雅を見る。
まあ、私のいった通り今夜が終わる前には帰って来てはくれるが、やっぱり遅いと思っていた。
そんな姫君を見て私は、ふと期待をしてしまう。
私のことを待っていてくれたのかな。
だったら嬉しいのに・・・。
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