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そう思いながら姫君の部屋の前の階段を上がった。
「姫君今帰ったよ。」
風が吹いて、私と友雅の髪を揺らした。
友雅から香りがする。
いつもの香とは違う華やかな花のような香り。
私のあまり好かない香りだった。
こういう香は男が付けることはない。
女と決まっている。
「今日も遅かったですね。友雅。」
友雅を見ると口に赤い紅がついていた。
風で乱れた髪をかきあげたとき、首にも紅が付いているのが見えた。
私は本当に嫌な気分になる。
「屋敷の中を歩くときは、せめてその口紅を落としてください。」
「これは、すまない。」
悪びれた様子もなく、友雅は言う。
私が、この屋敷に住まう前から友雅はいろんな女と毎晩酒を飲み共に過ごしていたらしい。
今もそれは変わっていないようだが。
女房に聞くと、私がこの屋敷に来てからは、友雅は必ず屋敷に戻って来るようになったらしい。
お酒に強い友雅はかなりの量のお酒を飲んで来ていたらしい。
体に悪いと忠告していても聞くことはなかったそうだ。
まぁ、それがどうしたというわけではないが・・・。
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