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「いやはや、お待たせ致しましたなぁ。」
「遅いの!遅いの頼長!待ちくたびれたぞ!」
飄々とした様子の頼長に駄々をこねる子供のように食い付く頼継
「頼長殿、御足労忝なく。恒時殿も」
まずは労いを入れる盛光。頼長が後ろを振り向き頼継も頼長の後ろを覗き込むともう一人男が立っていた。
「遅参、面目御座いませぬ。」
「おぉ、恒時殿も参ったか。これでよう話し合いができるの。」
村田恒時は盛光と同じく高遠の譜代の臣である。
寡黙で無骨だが家中屈指の戦上手で臣からの信頼も集めていた。
この村田恒時、今永盛光、そして桜井頼長の三人が今の高遠家を支えている三本の大黒柱と言って違いなかった。
「と、とにかく今は憎き武田と諏訪について話さねばならぬの!!」
挨拶などしている場合かと言わんばかりに頼継は声を大きくした。
「その事ですがの、道中暇なもので馬に揺られながら少々考えて来ましたわい。」
「なんと!頼長そなた!馬に揺られながらそんな事ができるのかの!」
何とも頼もしい一言に思わず頼継は目を丸くした。
「それでは、まず恐らく奴らの進軍経路は二つ、比較的兵の少ない諏訪は下諏訪まで北上し山道を抜け北より、兵の多い武田は東より最短でこの高遠を目指すものとわしは考えておる」
先ほどの飄々とした様子から鋭さを放つ将の顔つきに変わった頼長の言葉を三人は黙って聴いている。
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