二章 ルージュ旅に出る

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sideリンク この国の騎士になってからもう何年たっただろう……? 私がここに来たとき、彼女はほんの小さな子供で先先代の王も先代の王もお妃様も生きておられた。 ……あの頃は本当に毎日が楽しかった。 平和でおだやかで活気のある素晴らしい国だった。 姫様も……いつも心の底から笑い、素直で優しい真っ直ぐな性格を養っておられた。 今朝、レインに呼び出され怒鳴られて初めて気づいた。 彼女が笑っていないことを。 自分に嘘をついて生きている事を。 姫様は優しいから、周りがそれに気づかない。 どんなに辛くても、 苦しくても、 弱音を吐かない。 最後に先代の王、彼女の父がなくなった時から僕にさえ一度も涙をみせていない。 その時だって民や臣下の前では毅然とふるまっていた。 部屋に戻られてはじめて涙をながされたのだ。 まだ姫様は14だったにも関わらず。 それを見て彼女を支えようと…… 彼女のためにこの身を捧げようと…… そう思い誓ったのに…… 気づけなかった。 彼女の決意に。 『お前は一番近くにいるのに何故あの子の心に気づいてやれないんだ! あの子は……どうして無理して笑ってる? あんなにも幼い女の子に何故あんな顔をさせる? あの子は……アイツは俺に民のために自分の首を差し出すと言ったんだぞ!? 城から助けてやると言っても民のためだと笑って……そう言ったんだぞ!? 何のためにお前は彼処で騎士をしているんだ……これでは約束がちがうだろ…?』 哀しみに瞳を揺らしたレインを見ていられなくて……静かに語られるより殴られた方がよかった。 何も言えない自分自身にイラついて…… ただ唇を噛み締め俯いた私に向かって、レインはいつものように不適に笑うといい放った。 『俺らでルージュ姫を世界に飛び立たせてやろうぜ!!』 いつもならその場で否定していただろうけど今日は違う。 彼女のために…… 私も一肌脱いでやろう。 そう思った。
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