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時は中世、王国ルノールには今日も平和な朝を迎えていた。
ルノール唯一の姫であるルージュは今年5つとまだ幼い。
しかし、王族特有のシルバーブロンドと、すんだパープルの瞳は人形のように形よく型どられている。
ルージュは、その愛らしい容姿と素直な物言いで国民からも家族や家臣達からも好かれている。
さて、そんな彼女は朝の挨拶のため王妃の元を訪れている。
王妃の膝に座り、一度もハサミを通したことのない美しい長い髪を透いてもらっている。
「お母様、今日私ね夢を見たの!」
「夢? どんな夢をみたのかしら?」
「んーっと、ね……私知らない男の人に手にチューしてもらったの!」
ニコニコと告げるルージュに王妃は一瞬怪訝そうな顔を見せ、すぐに笑顔に戻った。
「そうなの、良かったわねルージュ。(手に接吻なんて……この子は知らないはずだけど……) ね、ルージュは他の人が手にチューしてるところを見たことがあるのかしら?」
「ないよ? 変なお兄ちゃんだよねー」
母の問いに答えたルージュはしきりに首をかしげている。
と、さらなる困惑に陥ったのは王妃。
「そうね、きっとそのお兄ちゃんはルージュの事が大好きなのよ。(……この子は将来……いえ、考えてもしかたのない事だわ)」
王妃の心配など全く気付かないルージュは、元気に膝から飛び降りるとパタパタとさっていった。
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